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バツイチと言わせない
第5章 深まりゆく愛
「電話…出なくていいの?」

「うん…」

全くタイミングの悪い電話だ。
いったい誰からだろうと
尻のポケットからスマホを取り出して画面を確認した。

画面には『蒼太先輩』という文字が浮かんでいた。 着信音はやむことなく鳴り続ける。

「電話…でた方がいいんじゃない?」

希美子に催促されて「じゃあ、ちょっとごめんね」と断りをいれて部屋の片隅に行ってスマホ画面をタップした。

たちまち『おい!康介!』と蒼太の怒鳴り声が聞こえた。
慌ててスマホを耳に押し当てた。
もしかしたら怒鳴り声が希美子の耳に届いていたかもしれないと彼女の方に目を向けたが希美子はこちらに関心などないかのように乱れた衣服を整えていた。

『康介!今すぐ俺の部屋へ来い!』

「今からですか?」

『ああ、今すぐだ』

「今、ちょっと都合が悪くて…」

『そんな事を言っていいのか?
年増女との関係を
お前のお袋さんに告げ口してもいいんだな?』

「わ、わかりました。
行きます!すぐ行きます!」

通話の終わったスマホを尻ポケットに納めながら「ごめん…」と希美子に詫びた。

「急用?」

「まあね…ちょっとした野暮用で…」

「なら仕方ないわね」

康介としては引き止めてくれるものだと思ってただけにやけにあっさりとしてる希美子に少しガッカリした。

「明日…また来てくれるのよね?」

「うん、絶対に」

「カミソリ、忘れないでね」

明日の約束を交わし、
康介は希美子の家を後にした。
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