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彼女のお母さん
第1章 序章
瑠璃子の母親の
美登里の下着を探し出そうという魂胆であったが、
あいにくとその手のものは見つからなかった。


ガラクタと呼べるような品々を
黙々と段ボール箱に詰め込んだ。


やがて押し入れの奥から
一本のビデオテープを見つけた。

「何だろう?」

ラベルには何も書かれていなかった。
雄一は猛烈にビデオテープを再生してみたくなった。

「これ、もらってもいいかな?」

「別にいいけど…
再生するビデオデッキなんてないでしょ?」

「あるのさ、俺の家に
骨董品のようなビデオデッキがさ」

面倒な断捨離ではあるが、
このように興味がわいてくるお宝が
まだまだ眠っているようで、
雄一は俄然やる気を出しはじめた。

そんな彼氏の態度に
男って変な生き物だわと
瑠璃子は冷めた目で彼氏を見つめていた。


その夜、雄一は瑠璃子を自宅に招いた。

瑠璃子を泊めてもいいだろ?と
両親に打ち明けると
父親の清は、外出自粛要請も政府から発令されていることだし、ストレスも溜まるだろうと快く許可してくれた。

母親の聡美はあまりいい顔をしなかった。

自室に消えた二人を見送って、
聡美は渋い顔をした。

「あなた…幼児のお泊まり保育じゃないのよ、
淫行に及んではいけないわ」と危惧した。

そんな聡美を清が諭した。

「SEXなんざとっくにやりまくってるだろうよ、
俺たちだって付き合っていた学生の頃から…」

そう言われるとぐうの音も出なかった。

『避妊だけはしっかりとして頂戴ね』と
心の中で祈った。



「本当に再生できるのかしら?」

ホコリまみれのビデオデッキを掃除しながら、
瑠璃子は半信半疑でそう呟いた。

「オンボロだけど
当時としては高級な型番だったんだぜ
まだまだ現役に違いないさ」

さあ、再生するぞとテープをセットした。

再生ボタンを押すと、
何だか艶めかしい音楽が鳴り始めた。

画面はノイズがひどかったが
鑑賞に堪えなくもなかった。

BGMがフェーズアウトするとともに
タイトルが現れた。

〈モリマンの女〉

タイトルをみた途端、
雄一は『これってもしかしたら…』と
ワクワクし始めた。

瑠璃子と言えばモリマンの意味がわからずに
興味なさそうに画面を見続けていた。
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