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蒼い春
第1章 ロストバージン
初めて男が訊ねてきた日のことを
女の子は昨日のように覚えていた。
挨拶のあと、
夕食を済ますと女の子は
そそくさと自分の部屋に行くように命じられた。
「いいのかい?なんだか可哀想だね」
やさしいバリトンの声で男が母に聞いた。
テレビが母の部屋にしかなく、
見たいテレビ番組とかあるだろうにと、
男が同情してくれた。
「だって…。
あなたに甘えるところを見られたら
恥ずかしいもの…」
それは初めて聞く女としての母の声だった。
やがて電灯が消されたのか
襖の隙間から差し込んでいた光がなくなり、
真っ暗な静寂が訪れた。
しばらくすると、
「ねえ…」という
鼻にかかった甘ったるい母の声がした。
「まだ、起きてるんじゃないかい?」
女の子の事を気にしてるのだろう。
女の子もまた、
2人の情事の妨げになってはいけないと
身体を強張らせジッと身を潜めた。
「あの子、寝入りが早いのよ。
大丈夫よ…だからお願い…」
チュパという音が微かにした。
お互いの唇を重ね、接吻したのだろう。
女の子は襖の隙間に目を近付けた。