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保険外交員の営業痴態
第7章 コンビネーションプレー

『入ってきたまえ』

ドアのロックが解除された音がした。

「失礼します」

ドアを開けると勝手知ったる部屋のようで
明子はスタスタと奥へとあがりこんでゆく。

遅れてはいけないと
真由美も慌てて明子の後に続いた。

突き当たりの部屋の前まで行き、
コンコンとドアをノックした。

「どうぞ」

物静かではあるが
なぜかイライラしている雰囲気がした。

「失礼します、遅れて申し訳ございません」

男は向こうを向いてパソコンを叩いていた。
その背中に向かって
明子さんは深々とお辞儀をした。

「ほら、あなたも!」

明子さんに促されて
真由美も慌てて頭を下げた。

「ったく…!わざわざ時間を取ってやったのに
遅れるとは何様だ!」

リクライニングチェアがクルリと回って
男が正面を向いた気配がした。

「ほんとに申し訳ありません」

「僕はこのあと渡米しなきゃいけないんだ
手短に頼む…よ」

頭をあげた真由美の姿を確認して
男の語尾が弱々しくなった。

「横田さん…その子は?」

男に促されて「ほら、挨拶なさい」と
明子さんが真由美の脇腹を肘でつついた。

「あっ…私、中西真由美と申します」

緊張して男の顔も見れなかった。
真由美は名乗ると、もう一度深々とお辞儀した。


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