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保険外交員の営業痴態
第14章 人事部 木下幸平
大きなビルを見上げて
真由美はため息をついた…
『呼び出しだなんて…
新年早々ついてないわ』
一時期、まったく契約が取れない時もあったけれど
最近はコンスタンスにノルマをこなして
呼び出される筋合いはないとは思っているけれど
いざ、こうして本社のビル前に立つと
気が重くなる。
受付で自分の名を名乗り
人事部の木下部長をお願いしますと告げると
明子さんがアポを取っておいてくれたのか
「20階の人事部長室にて
お待ちしているそうです」と
営業スマイルで受付嬢は爽やかに告げた。
足取りは重いけれど
エレベーターは高速で
あっという間に目的の20階に到着した。
『えっと…部長室はと…』
多くのドアを確認しながら歩みを進めると
一番奥の部屋が目的の部屋だとわかった。
コンコンコン…
ドアをノックすると
すぐさま「入りなさい」と隠元な声が返ってきた。
「失礼します…」
おずおずと入室すると
真由美の姿を見るなり
部長の木下は「やあ、よく来たね」と相好を崩した。
まあまあ、堅くならずにそこへお座りなさいと
部屋の真ん中に置かれてある応接用のソファに
腰かけることをすすめた。
「君が中西真由美くんですね?」
真由美を見つめる木下のメガネの奥の目が
じろりと真由美を睨んだ。