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保険外交員の営業痴態
第16章 愛を抱きしめて
小さな折りたたみ傘だったので
駅からホテルまではほんの短い距離だったのに
体の半分がしっとりと濡れていた。
「なんだ、けっこう濡れてるじゃないか
だからもっとこっちにお寄りと言ったのに…
なんにせよそのままじゃ体も冷えてるだろうし、
お風呂に入ってこいよ」
「…ありがと」
お言葉に甘え、先にお風呂を使わせてもらった。
シャー…
シャワーを当てると、体が温まっていく。
温まってくると、
これが現実なのだと実感してきて
口元が緩む自分がいた。
進一にいちゃんに、また会えた…
そう、お正月に実家から
横浜まで送ってもらってから
ずっと心の奥深くに彼のことを思っていた。
その時、
「ゴメン。やっぱり俺も体が冷えたから
一緒に入っていいよな?」と
進一にいちゃんがドアの隙間から顔を覗かせた。
「もちろんよ!」
来てくれる!
スーツ姿でなんだかよそよそしいと感じたのは
単なる自分の思い過ごしだったんだと
真由美は安堵した。
カチャ…
久しぶりに見る進一の裸体…
真由美は思わず進一に抱きついた。
「おい、ちょ…っと」
シャワーで流れ落ちたシャボンの泡のヌメリで
進一は真由美を受け止める事ができずに
進一はタックルを受けた感じで
二人してバスルームに倒れこんだ。
「アイタタタ…」
ドラマのラブシーンのように
スマートではないけれど
進一の肌に触れると何かが吹っ切れたような感じで
真由美は進一にしっかりと抱きついていた。
「…誘ってる?」
「…え?」
その一言で、
ああ、そうか…おにいちゃんは
もう誰かの旦那さんになったんだと
そんな妻帯者に対して
自分がハレンチな行為をしているのだと
顔から火が出そうになった。