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保険外交員の営業痴態
第1章 セールスレディとしての自覚
「私が契約を取っているときのノウハウを
録音してあるわ」
明子さんは周りに気づかれないように
小声でそう言った。
「録音?」
後でなにかとトラブると面倒だから
証拠としてこっそり録音したものを
メモリースティックにコピーしてあるのだという。
「家で聴きなさい。あるんでしょパソコン?
こっそり一人で聴きなさい、いい?
誰にも聞かれないように…いいわね」
小声でそう念を押すと、
もういいわとばかりに手でシッシッと追い払った。
真由美は帰宅後、夕食と入浴を済ますと、
ノートパソコンを起動させ、
メモリースティックをUSBに差し込んだ。
メディアプレーヤーを立上げ、
USBを選択すると
「真由美ちゃんへ」というフォルダが
ひとつだけ保存されていた。
どんなノウハウなのだろう…
ポインターをフォルダーに合わせてクリックした。
しばらくすると
ガサゴソというノイズが始まった。
おそらくバッグにでもマイクを仕込ませて
録音したのだろう。
『どうです?…
すごく条件のいい保険なんですのよ。
それに終身の契約をしてくれるのなら…』
明子の声が明瞭に聞き取れた。
よほど高性能なマイクなのだろう。
しかしやがて
声が小声になり少し聞き取れにくくなる。
『ほんとかね?ほんとにいいのかね』
少し年配の男性の声。
心なしか声が弾んでいる
『ええ…契約いただけるというのが条件ですわ』
明子か上着を脱ぐ衣擦れの音がする。
「ねえ…自由にしていいのよ」
「?…なにこれ?…」
真由美は、なにかやばい気がして
あわててイヤホンを装着した。