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保険外交員の営業痴態
第6章 准教授の前田

「ところで…」

コーヒーをカップ半分ほど飲んだところで
前田が唐突に話し始めた。

「中西さん、何か悩み事でもあるんですか?」

思いがけない質問に真由美は戸惑った。

「最近、講義中も何か上の空という感じですし」

ただひたすらダラダラと
講義をしているわけではなく
前田はちゃんと学生達を観察していたのだ。

「やっぱり…わかっちゃいます?」

「中西さんよりも、
ほんのちょっぴり長く人生を過ごしてますからね
些細なことも気になるようになるんです」

真由美はピュアな気持ちで
保険の加入を進めてみた。
色仕掛け抜きで、
前田なら真由美の為に加入してくれそうな気がした。


「う~ん…保険ねえ…
いや、入ってあげたいのはやまやまなんですが
ほら、准教授って案外と薄給なんですよ」

それよりも、と

「君がそんな仕事を始めたとはねえ…
ほら…なんていうか…ねえ…」

饒舌だった前田の口調が
急に口ごもり始めた。

「なんていうか…って何ですか?」

真由美は前田が何を言いたいのか
真意を確かめた。

「いや…これはまあ…世間一般の噂ですが…
あくまで噂なんですが…
ほら、保険外交員って…成績アップのために…
なんていうか…ねえ…」

前田が枕営業のことを言わんとしているのが
ニュアンスでわかった。




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