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黒い瞳
第3章 淳子~6歳~

すっかり陽が落ち、あたりが暗くなった8時ごろ、そのおじさんはやってきた。

「こんばんは」

ダミ声の男の声・・・・

淳子はその声が気分的に好きになれないと感じた。


「いらっしゃい、お仕事ご苦労様でした」

いつもらしからぬ母の可愛らしい声・・・

「お言葉に甘えて、お邪魔させていただきました」

「散らかっていて、恥ずかしいんですけど、どうぞおあがりになって」

母の後からおじさんは部屋に入ってきた。

「淳子、このおじさんが前から話していた八神さんよ。ちゃんとご挨拶なさい」

淳子が挨拶をする前に八神が

「やあ、お嬢ちゃんが淳子ちゃんだね。
こんばんは、よろしくね。
これ、淳子ちゃんにプレゼントだよ」

そう言って、人形を淳子の手に渡してくれた。

「ほら、ちゃんとご挨拶と、お人形のお礼を言いなさい」

そう母に促され、
ようやく「こんばんは、ありがとう」と
淳子はようやく言葉を発した。

「女手ひとつで育てているもんだから、
甘やかせてしまって・・・はずかしいわ」

「いやいや、なかなかお利口さんじゃないか」

そう言いながら二人は、
しばし、見つめ合っていた。


3人で食卓を囲み、
母は八神に寄り添うように座った。

たくさんの料理を用意したが、
八神は少し箸をつけてはビールばかり飲んでいた。

八神が、空いている左手を食卓の下でモゾモゾと動かすたびに
母が、いやん、とか、だめよ後で、などと
鼻にかかった甘い声をだしていた。


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