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黒い瞳
第5章 淳子~15歳~
これから、どうしよう・・・
パートの収入だけでは、
かなり苦しい生活になるだろう。
母の父母は母が若いころに亡くなったと
生前に母に聞いていた。
祖母や祖父がおれば、
相談することもできただろうにと
淳子は途方にくれた。
そうだ、お父さん・・・
幼い頃に別れて、顔も知らないけれど
私の唯一の肉親・・・
父に相談してみよう、
もしかしたらなんらかの援助をしてもらえるかもしれない。
たしか母の遺品を整理しているときに、
古びたバッグがあった。
母が家を飛び出すときに持ち出した、
唯一の持ち物だったのだろう。
その中から出てきた書簡。
住所は淳子が見知らぬ地名が書かれてあった。
そして母の名字も違っていた。
これは恐らく離婚前の姓・・・
そして母が父と暮らしていた住所?・・・
そこに父はまだいるだろうか?
1通の書簡の住所を頼りに
淳子はそこを訪ねてみることにした。
書簡の住所をたよりに訪ねてみると、
そこはかなり立派なお屋敷だった。
ここに若き母と幼き自分が暮らしていたのだろか。
表札の姓は間違いなく母の書簡と同一であった。
訪ねてみたものの、
いざとなると怖気づき呼び鈴を押すことを躊躇した。
そうこうするうちに、門扉が開き、
壮年の男性が姿を現した。