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黒い瞳
第5章 淳子~15歳~
男性は淳子に気付くとハッと息をのんだ。
「・・・あなたは、ひょっとして淳子ではないのか?」
「えっ?・・・はい・・・淳子です。
どうして私だと気付かれたのですか?」
「あなたは、若いころの妻に・・・・あ、元妻にね瓜二つなんですよ。
よく訪ねてきてくれた。さあ、どうぞ中へ・・・」
話を聞くうちに、その壮年の男性こそが父なのだと判った。
「あなたたちが、この家を出て行ってから10年・・ いや12年になるか・・・
ちなみにお母さんは元気で暮らしているのかい?」
「ええ・・・実は・・・」
淳子は母が病でこの世を去ったこと、
母の遺品の中から書簡を見つけ、
ここを訪れたこと、
自分にはもう父であるあなたしか身寄りがない事を話した。
「そうだったのか・・・死んでしまったか・・・」
父はなにかを悔いるように
応接室のテーブルに視線を落とした。
「あなたは、私たちが離婚した理由をお母さんから聞いたことがあるかい?」
「いいえ」
「私たちは若かった・・・いや、若すぎたんだよ・・・
あなたを身ごもった時期に私は浮気をしてしまった。
いや、決して本気の恋愛ではなかった。
あなたがお腹にいることで、夫婦生活はしばらくご法度となった・・・
私は性欲の捌け口を他の女性に求めた・・・」
父母の離婚の原因・・・
今、父の口から真実が聞けるのだ。