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黒い瞳
第7章 淳子~19歳~
パンッ!!
乾いた音とともに若林の側頭部に衝撃が走った。
「もうすぐよ。がんばって!」
産婦人科医が声をかける。
「ああーっ!くうーっ!!」
淳子は歯を食いしばり、力を振り絞った。
ズルッとした衝撃とともに・・・
「おぎゃああ・・おぎゃあああ!!」
けたたましい産声が分娩室に響いた。
「おめでとう!かわいい女の子よ!」
女医が、へその緒を切り、 きれいに体を拭った我が子を胸元に抱かせてくれた。
「始めまして、由紀子・・・私がママよ」
我が子をいとしく見つめながら
心の中で健太に報告する。
『健太・・・残念でした。女の子よ』
一方、犯行現場ではSATが犯人を取り押さえ、 事件は一気に終息した。
『俺は撃たれたのか?』
何人もの足音が聞こえる。
「被疑者!確保!!・・・人質無事救出!!」
捜査員の声がする。
『よかった。人質は無事のようだ・・・』
「1名負傷!!!タンカ!タンカ!早くしろ!!早く!!」
『俺のことか?やはり俺は撃たれたのか?』
体が急に冷たくなる。
『寒い・・・』
何人もの手が若林の体に伸びる。
ベルトを緩められ、すばやくタンカに乗せられる。
『寒い・・・俺は・・・俺は・・・死ぬのか・・・?』
体の感覚が無くなる。
『淳子・・・どこだ・・・淳子・・・会いたい・・・ 淳子・・・そしてまだ見ぬ我が子・・・ ゴメン・・・俺・・・・先に逝くわ・・・・』
健太は深い闇に包まれた・・・・