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いろはにほへと~色は匂えど~
第7章 婚礼
村で殿に見初められたお吉ではあったが、
殿はお貞という腰元にご執心てあった。
来る日も来る日も夜のお供にお貞を指名した。
お貞が側室に上がるのも時間の問題であった。
殿に呼ばれない腰元達は
男日照りの我が身を己の指で慰めていた。
中には気の合う者同志で乳繰り合う者もいた。
そして腰元二年目のお京が
己の慰めの相手として密かにお吉を狙っていた。
ある夜、お吉は枕元に立つ人の気配で目が覚めた。
「お吉…私よ…
お願い、静かに私の後についてきて…」
いつもは嫌がらせをするお京が猫撫で声で、
しかも『お願い』だなんて…
訝しがりながらも
お吉は静かにお京の後について行くと
今は使われることのない物置部屋に連れ込まれた。
「なんのご用でしょうか?」
腰元連中の部屋から遠く離れたこの部屋では
多少の声を出しても聞こえるまい。
お吉の脳裏には私刑(リンチ)の文字が浮かんでいた。
お京は一言も発さずに、
振り向きざまお吉に接吻した。