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蜜と獄 〜甘く壊して〜
第6章 【あなたに壊されたい】





仮面を被った風俗嬢の卒業なんて高が知れてると思っていた。
サッと居なくなろうとしていたのにお店側も粋な計らいで店内はお花で埋め尽くされサプライズでキャスト全員から見送られる形となった。




これくらいは良いだろう?とオーナーがウィンクしてる。
そして、この場に堤さんは居ない。
自らそうしてもらえるよう頼んでおいた。




私の風俗嬢人生、最後は一番の太客さまで締め括った。
オプション全部出し切った。
他の子よりNG項目が多く、出勤日も少ない。
それでも指名し続けてくださったお客様たちには心から感謝しているし、書道家人生では学べない事を多く学んだ気がします。




この最後の日が、テッペン取れたから見れた景色なんだと思う。




追い抜けなくて正直悔しいと面と向かってキャストに言われた。
もっとリリカの接客術見ておきたかったとも。
まだ私の仮面を外したところ見ていなかったキャストが驚いていた。




この顔なら顔出ししてたらもっと勝ち目ないわって笑ってた。
短い時間だったが色々吸収した事はあり過ぎて結局最後の挨拶で涙ぐんでしまった。




もう出戻りする事はないとはっきりお伝えした。
自分が書道家である事も出来れば伏せていたかったが隠すと余計ネタにされるといけないので打ち明けた。




だが、この先神楽坂紗衣として活動する事も暫くは控えると。
身バレ防止の為に協力要請を私とオーナーからもキャスト側にお願いした。




「ただの興味本位で入ってうちらの事馬鹿にしてたんじゃなかったんだね?何か、ゴメン……ここで辞められたら一生追い抜けないじゃんって思うけど、これから伝説になるお嬢と一緒に働けた事、自慢くらいはさせてよね?」




例のネットの件に絡んでいたキャストからそう言われて涙を堪えるのに必死だった。
全然伝説なんかじゃないよ。
全部まぐれで運だった。
周りに恵まれてたんだと思う。




「ありがとうございました!!」




本当に短かった1年と2ヶ月。
14ヶ月間の風俗嬢生活。
ここにピリオドを打ってまた新たな人生を歩んでいく。




やっぱり聞かれた堤さんとの仲はちゃんと否定させてもらった。
目には見えないけどそこにある強い意志に気付いてもらえたら。










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