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女優
第12章 愛子の人生

若女将が安岡の味噌汁を手にして
再び彼らのテーブルにやって来た。

「若女将、何か良いことでもあった?」

よせばいいのにマネージャーの男は
若女将に問いただした。

「良いこと?あれば良いんですけどね~」

そう言いながら若女将は
皆に気付かれないように安岡にウィンクをした。


「そうかい?なんだか今日は
若女将から良い匂いがするんだけどね~」

「上手を言っても何も出ませんよ」

ウフフと笑いながら若女将は厨房に姿を消した。

確かに今日の若女将は良い匂いがした。

安岡は彼女の残り香で飯を一膳食えそうだった。

そんな安岡とは対照的に
愛子と近藤はギクシャクしたままだ。


「愛子ちゃん、そんなテンションで大丈夫か?」

心配になって安岡が問う。

愛子が返答するよりも先に

「メイクしたらスィッチが入って
ちゃんと仕事しますから」と
マネージャーが横やりを入れた。



自室に戻り愛子はメイクを施した。

低予算の作品に数多く出演するため
メイク係が付かない事が多いために、
今ではプロ並みのメイクが出来るようになった。

かなりのメイク道具を購入しなければいけないのは痛手だったが、

この仕事を辞めても
メイキャプとして食べていけるのではないかと思うほど
メイクの腕前は冴えていた。


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