この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
女優
第12章 愛子の人生
「おっ?今から撮影かい?」
昨日から泊まりがけの常連客達が
撮影を見学しようと
我先にと浴室に飛び込んできた。
「皆さん、お静かにお願いしますね」
マネージャーがA4ノートにマジックで
『お静かに』と書き込んで
即席のフリップを作って頭上に掲げた。
たちまち訪れる静寂…
同録でなく、
画に合わせて後からBGMを流すので
雑音など気にしなくてもいいのだが、
マネージャーが臨場感を盛り上げるために
わざとらしく雰囲気を作り始めたのだった。
気のいい常連客達は皆、口をつぐんで
撮影の邪魔にならぬように浴室の片隅に陣取った。
「愛子ちゃん、入りま~す」
マネージャーに促されて
脱衣所で色気たっぷりに浴衣を脱ぐ…
あまりの艶っぽさに
そこが脱衣所であることを忘れ、
ストリップを見に来ているのかと
錯覚した客の中には
ペニスを勃起させて
マスターベーションする男もいた。
静寂の中に
ペニスを擦るシコシコという音さえ
愛子の耳に飛び込んでくる。
カメラマンの近藤は
自分が惚れた女の裸体で
マスターベーションをする客を睨みつけた。
なるほど…AV嬢を彼女にすると言うことは
このように嫉妬に駆られるものなのかと
愛子が自分を受け入れてくれなかった理由が
ちょっぴりわかった気がした。
「カメラ!手ブレしてるぞ!」
監督からダメ出しが出る。
『くそっ…集中しろ』
近藤は自分に向かって叱咤した。
たちまち画像に魂が込められてゆく。