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女優
第5章 メイク担当の男

「おっ、いい色のスカートだね」

聡はおニューのスカートに目を留め誉めてくれた。

普段から裸を商売にしている愛子にしてみれば
おっぱいやお尻をスタッフから
誉められる事はあってもこうして私服を
誉めてもらえる事が少なかったので、
何故かその言葉が新鮮で嬉しかった。


「ありがとう。
先日のお休みの時に買ってきたおニューなの」

「買い物とかよくされるんですか?」

「ええ、渋谷とかによく行きますよ」

「でも顔が売れてるから
出歩いたりするの大変でしょう」


さあ、ここへ座ってと
聡が椅子を引いてくれながら
気さくに話してくれた。


数年前までは
アイドルグループの一員ではあったが、
大所帯のグループだったので
愛子の顔を知ってるなんて
ほんとにコアなファンだけだった。


AVでそこそこ売れても
街角で声を掛けられるなんてほとんどなかった。

「ほんとに?俺なら、あ!仁科愛子だ!と
一目でわかるけどなあ」

「またまた~」

「ほんとですよ、
俺、貴女がアイドルでデビューしたときから
ずっとファンでしたから…」

単なるリップサービスかと思いきや、
聡は小さな声でデビュー曲を口ずさみ始めた。

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