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猫探偵の恋
第8章 消えたまりんと能力 by洋平
ギターのリョウに電話をしてみる。
良かった。
こいつの電話は繋がってる。


「どうした、洋平?」

「あのさ、彼女が居なくなったんだ」

「彼女って、猫のこと?」

「えっ?」

「お前さ、マロンだっけ?
猫飼ってから、すげえ付き合い悪くなったよな?
明日のスタジオ練習の後、たまには飲もうぜ」

「そうじゃなくて、いつもライブにも来ていた、
小柄で可愛くて…」

「お前、ここの処、ずっと彼女なんて居ないじゃん。
夢でも見てるんじゃないの?
じゃあな!」


どういうことだ?


とぼとぼと帰宅して、ドアを開ける。
ソファの向こうに小さいさび猫が居る。


「マロン?」
声を掛けるとこっちに来て、尻尾を擦り付けながら脚に絡まる。

取り敢えずキッチンで水とカリカリを出すと、
「ふんっ」という顔をするので、
レトルトの猫ご飯を出した。
満足そうな顔でゆっくり食べた。



「お前は…
まりんのトコにいたマロンだよな?
どう言うことなんだ?
夢だとでも言うのか?
でも確かに俺、
まりんと愛し合ってたよな?」


マロンの声は、にゃーとしか聴こえない。
やっぱり猫と話は出来なくなっていた。


長い夢を見ていた。
そう思うしかない。


それが、俺の出した結論だった。



猫みたいに、
気ままで、素っ気ないこともあるまりん。

そのくせ、甘える時は、
めちゃめちゃ甘えてくるまりん。

喋るのが苦手で、
ただ、隣に座ってるだけのこともあるまりん。

かと思うと、
自分から俺に跨って、キスをたくさんしてくれるまりん。



考えたら、写メの一つも撮ってない。

記憶の中にしか居ない。


感覚として、
抱き締めたり、
キスしたり、
セックスしたことしか、
俺に残されたものはなかった。
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