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夜の蝶の物語
第3章 年増のリリーさん
さあ、どうぞ横になって
リラックスしてくださいなと
リリーがベッドに横たわることを促しても
吉井さんは立ったまま動こうともしない。
どうしましたか?とリリーが尋ねると、
吉井さんはポロポロと涙をこぼした。
「僕は、貴女と会えるのは
今夜が最後かもしれません…
実は糖尿病が悪化して
明後日から入院するんです…
おそらく透析をすることになるでしょう」
そう言っていきなりリリーに抱きついてきた。
「いやだ!貴女と離れたくない!
ひと月に一度会えるのが
私の楽しみだったんだ…
しかし、治療費と投薬代で
贅沢するだけの余裕がなくなるんだ」
今までキモイおやじだと
思っていたリリーの感情が
スーッと憑き物が落ちたような気分になった。
そんなふうに自分を
指名してくれていたなんて…
リリーは吉井さんの背に腕を回して抱きしめた。
「そうだ、吉井様、良いことをしてあげる。
お店には内緒ね」
そう言ってリリーは吉井さんとキスをした。
突然の事で驚いた吉井さんだったが、
意を決したようにリリーの唇に吸い付いてきた。
そして、どちらからともなく舌を絡めあった。