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女流作家~君を愛すればこそ~
第8章 帰国
「さあ、どうぞ。
自分の家だと思って気楽になさってね」
桐子は城島女史をリビングに招き入れた。
「ちょっと待っててね、
今、コーヒーを淹れるから」
キッチンに向かう桐子の後を追うように
晃もキッチンに入った。
「まあ!お客様のお相手してくれなきゃ困るわ」
桐子は晃を追い出そうとする。
「僕が彼女と相性が悪いと知っていながら
連れてきたのかい?」
晃は不満そうに頬を膨らませた。
桐子に追い出された晃は
仕方なしに城島節子の向かいに腰をおろした。
「お久しぶりね」
笑顔で晃に挨拶をする城島だが
メガネの奥の目はひとつも笑っていなかった。
「その節はお世話になりました」
世話になったどころか、
編集部に勤めていたころは
毎日のように叱責されていた。
「今回の取材旅行は充実していたわ
お陰であなたの奥さまである先生の事を
とてもよく理解出来ましたし…」
「まあ!私の方こそ節子さんと
仲良くなれて楽しかったわ」
桐子がトレーにコーヒーカップを
3セット用意してキッチンからあらわれて
相好を崩した。
二人は旅行の思い出を延々と語りはじめた。
面白くないのは晃だった。
まるでそこに自分がいないかのように
桐子と節子の二人だけの空気が流れてゆく。