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女流作家~君を愛すればこそ~
第9章 新しい愛の形

「何も言わないで!
何も言わずに私に従って頂戴!」

桐子は自ら男のズボンを下げたことが
あまりないので、
ベルトを外す動作がぎこちない。

慣れない作業だけではない、
怒りで手が震えて上手くベルトが外せない。

「待てってば!
俺はそんな気分じゃないんだよ!」

節子と夜通しセックスをしたので
睡眠不足と性欲が満足していることで
桐子の要望に応えられそうもない。
思わず声を荒げて桐子を引き剥がした。

「節子さんは抱けて私は抱けないって言うの?」

小さく渦巻いていた嫉妬の嵐が
台風のようにうねりを上げて
桐子の心を掻き乱した。

そして波風を立てまいと
胸に秘めていた言葉を
桐子はついに言ってしまった。

「俺が節子を抱いたって?
何をバカなことを言い出すんだ!」

不貞がバレると男は
2パターンのどちらかになる。
不貞を認めてヨリを戻そうと妻に優しくなる男と
一切不貞を認めずに、
あくまでもシラを切る男と…

晃は桐子の勘違いだということにして
全てを押し通そうとした。

「じゃあ、これはいったい何よ!」

桐子は部屋の片隅に置いたゴミ箱を手にすると
それをひっくり返した。

「あっ!」

露骨にしまったという顔をして
晃は汗をかきはじめた。
部屋中に栗の花の香りが充満していた。

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