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夢の異邦人(エトランゼ)
第12章 旅の終わり
シャワーを浴びてバスルームから出た義孝は
ガランとした部屋を呆然と見ていた。
『まさか本当に出ていくとはなあ…』
もう、こうなりゃ有里と正式に別れて
留美子と再婚するかな…
留美子という存在が
義孝に余裕をもたらした。
こうなりゃ有給を使ってふて寝を決め込むか…
だが一人では寂しいし…
義孝はスマホを手にすると
留美子に電話を掛けた。
スマホを弄っていたのか、留美子はすぐに電話に出た。
「留美子か?さっきは済まなかったな」
『いえ、奥さまが怒るのも当然ですし…
私、この機会に課長との関係を精算するつもりです』
「おいおい!ちょっと待てよ
俺はお前を愛しているんだ。別れるつもりはないよ」
『奥さまに不倫がバレたと言うのに?』
「精算すべきは俺と女房の方だ
君とは別れたくないんだよ…
今日は朝から疲れちゃったから
有給を取るつもりだ。
君も有給を使えよ。
この部屋で一日中愛を確かめ合おうよ」
義孝の誘いに、しばらくは無言の時間が流れた。
『課長…奥さまと別れて私と結婚してくれますか?』
愛人という立場を捨てて妻の座に座ることを
留美子は選んだようだ。
「ああ約束する。
君と結婚したいんだ」
そう告げると留美子は泣き出してしまい
「今からそちらに戻ります」と
涙声で告げた。