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夢の異邦人(エトランゼ)
第4章 バイトチーフの矢野くん
さきほど見たように、
真似してヤスリに本を擦り付けるものの、
ヤスリの回転に負けて
本を足元に落としてしまった。
「ほら、しっかり持たないと」
矢野が落ちた本を拾い上げ、
有里に再度手渡した。
「す、すいません」
見た目以上に、しっかりと
本を固定しないといけないようだ。
「いいですか、こうしてしっかりと
本を擦り付けるんです」
矢野が背後に回りゴルフのレッスンのように、
有里を抱きしめるように、
有里の手の上に自らの手を添えた。
「そうそう、いいですよ。上手です」
矢野に手を固定してもらったおかげで、
少しコツがわかってきた。
やがて矢野の手が少しずつ力を抜き始めた。
コツをつかんだ有里は、
なんとか自力でも本を固定し、
ちゃんとヤスリがけができるようになった。
「もう、大丈夫かな?」
そう言って矢野の手が
有里の手の上で触れるか触れないかという
やさしいタッチとなった。
そしてその手がやがて手首、前腕、肘へと
撫でるようにスライドしていく。
そのソフトタッチは
まるで極上の愛撫のようだった。