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夢の異邦人(エトランゼ)
第7章 白昼夢の終わりと始まり
翌日、有里は何も異常がなかったので
無事に退院した。
退院したことを告げに
その足で職場のブックセンターに顔を出した。
平日だったが
主婦層で店内はけっこう賑やかだった。
その人混みの中で有里は大牟田の姿を見つけた。
「大牟田さん」
声をかけると振り向いて
大牟田はニコッと笑顔を返してくれた。
「もう退院したんだね
大丈夫?」
「ええ、体はなんともないわ
けど…」
「けど…なんだい?」
有里は不可解な現象を大牟田に話した。
あなたと、職場の皆で愛し合った二日間の事が
なかったことになっているのだ
おまけに今日の新聞の日付は2日前になっていた
「私、ほんとに気絶している間に
夢を見ていたのかしら?」
「君だけなら、そう考えるのが普通だろうね
でもほら、僕はご覧のように捻挫をしている
病院の領収書もここにある
日付は今日になっている」
「どういう事なの?」
「タイムスリップした訳じゃない
信じられないけどこれは…」
そう言って大牟田は本棚から一冊の本を抜き出した。
ー パラドックス 異次元の世界 ー
本のタイトルにはそう書かれていた。
「きっと、もう一つの世界があって
二日間、僕たちはそっちに飛ばされたんだよ
飛ばされたというよりは
別世界の僕たちと入れ替わったと言うべきかかな」
にわかには信じられないけれど
そのようにして考えると何もかも辻褄が合う気がした。