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おうち時間
第3章 キッチンで
由佳は分かっていた。
健人もまた大きなショックを受けている。
にも関わらず、それをおくびにも出さずに、由佳を支え、励まそうとしていることが。
それでも、由佳は素直に健人の優しさを受け入れることが出来なかった。
何度も夜の誘いを断り続け、気付けば2年以上行為がない。
立派なセックスレス夫婦となっていた。

(あの夜のこと……今思い出しても、ドキドキする…)

結婚前からのことを鑑みても、あの夜の健人は非常に情熱的だった。
何度も何度も求め合い、お互いが溶けて、なくなってしまうのかと思うほどに夢中で抱き合った。

あの時に、もう一度戻れたら…

この2年、そう思うことは何度もあった。
自分のせいで、セックスレスになっているのは分かっている。
けれども、セックスの誘いを幾度も断り、健人に酷く淋しそうな顔をさせておきながら、もう一度愛してくれ、なんて、虫のいいことは言えなかった。

カチャ、と脱衣所のドアが開く音で、はっと現実に引き戻された。

「あ、由佳、ごめ…」
「きゃ、け、健人さ……!」

由佳がバスタオルに手を伸ばすのと、扉が閉まるのはほぼ同時だった。

(も、もしかして、この格好…見られた……?)

由佳の心臓がドキドキと早鐘を打っていた。
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