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おうち時間
第4章 玄関で
浅い所を擦るだけで、じんわりとした快感が広がる。
指での抽送は、ただ、物足りなさを増幅させるだけだった。

「…ぅ…こ、じさ……」

万希子は、2週間も我慢のできない自分を恥じ、それでも、自身の身体の欲求に抗いきれずにいた。
ソファのオットマンの収納に隠した小さな箱を取り出す。
そこには、シリコン製の男性のものが入っていた。

夫には秘密の、万希子ひとり遊びの道具だ。

度々出張で家を空ける夫の代わりに、と万希子がこっそり購入したものだった。
手触りが良く、形といい、硬さといい、大きさといい、夫にそっくりで、万希子はとても気に入っていた。
ただ一つ、欠点があるとすれば、固定のための吸盤の強さがイマイチな所だ。

バックから突かれるのが好きな万希子は、壁面に固定して使いたかったが、この家の中に上手く吸盤がくっついてくれる場所がないのだ。

唯一、玄関扉を除いては。

以前、戯れにその玩具を家中の壁面という壁面につけて、1番固定しやすい場所を探したことがあった。
その時、家の中のどこよりもぴったりとくっつき、多少の動きでは外れなかったのが玄関扉だった。
ただ、場所が場所なだけに、万希子もそこで事に至るには勇気が出ずにいた。

でも、今なら。

壁一枚隔てた隣の部屋で行われているであろう行為を再び瞼の裏で再生する。
お腹の下の方がカアっと熱く疼くのを感じた。
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