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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4     律子とゆかり
 34 澄んだ目

「さて、えつを寝かせてきますね」
 伊藤さんはそう言って越前屋さんを…
「うぅん、よいしょっ」
 と、抱きかかえる。

「あ、わたしも…」
 一緒に越前屋さんを抱き起こす。

「あ、す、すいません」

「うん、手伝うから…」
 そして二人で抱きかかえ、伊藤さんの部屋に、そして買って来たマットレスベッドへと寝かせる。

 もう開封してあったマットレスベッドは原型に戻っていた…

「ふぅ、なんだかわたしも眠くなってきちゃったわぁ」
 越前屋さんを寝かせている伊藤さんの様子を見ながら、つい、そう呟いてしまう。

「必死に前に進んでるのはえつだけじゃなくって、ひ、姫、あ、ゆ、ゆかりさんもですから…」

「え、あ…」
 わたしはそんな伊藤さんの一瞬のその優しい言葉と、今夜初めて聞いた『姫』という彼女の言葉に、いや、失言に…
 一気に心が揺れてきた。

 あ、越前屋さんが寝ちゃったからまずいかも…
 そして更に騒めいてしまう。

 だが…
「あ、ゆ、ゆかりさんもお疲れでしょうから、後片付けはわたしがしますから、どうぞシャワーを、ううん、お先に寝てください…」
 伊藤さんはそう言った、いや、言ってくれたのだ。

 そう、必死に前に進んでいるのは越前屋さんだけではなくってこのわたしもなんだ、いいや、この伊藤さん、敦子だって…
 そう、この伊藤さんだって必死にあの旧態依然のあの保険会社と闘い、抗っていた一人なのである。

 わたしも、越前屋さんも、そして伊藤さんも皆同じなんだわ…

「……………」
 わたしはそんな伊藤さんの言葉に反応し、つい、そう考え、思わず彼女を見つめてしまう。

 そしてまた一気に、昨夜のあの禁断の昂ぶりまでもが蘇りつつあった…

 だが…
「さぁゆかりさん、遠慮せずにどうぞシャワーを…」
 と、伊藤さんは澄んだ目をしてそう言ってくれてきた。

 そう、その目はまるで、昨夜の禁断の昂ぶりなんてなかったかの様な…
 ただ本当にわたしの事を心配してくれているだけの様な澄んだ目に感じる。

 そして逆に、いつまでも昨夜の事を引きずっているわたしがイヤらしい感じにも思わせてくるのだ…

「あ、うん、ありがとう、じゃお言葉に甘えてお先にシャワーしてくるわね」
 
 わたしは浴室へ入る…




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