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シャイニーストッキング
第22章 ほつれるストッキング 1        佐々木ゆかり
 60 一週間…

「じゃ、健太よろしくね…」

 わたしは、ひと言だけ健太にそう告げて、出口でのどさくさに紛れ、通りの奥へと向かった。

 一瞬、美冴さんにも目配せしてからにしようと思ったのだが、見つからなかった…

「え…と、三軒茶屋まで…」
 とりあえず、タクシーを拾い、彼のマンションへと向かう。

 いつの間にかに、彼、大原常務の姿も見つからず…
 だが、明日ゴルフで朝が早いからと、真っ直ぐに帰る筈だし…
 なんとなく…
『今から行く…』とも、電話もしにくかったから、とりあえず向かった。

 それに、彼のマンションの鍵は、まだ…
 持っているし――

「ふぅ…」

 それに、美冴さんが手配してくれたから、わたしが向かうのは分かっている筈だろうし…

「はぁ…」
 まだ、一週間も経ってはいない。

 それは、彼自身も初めて常務就任を知らされた朝――
 それはまだ、僅か五日前の月曜日の朝。

 お盆休みにすれ違ってしまい、なかなか逢えずに、ようやく逢えた、最後の二日間…
 彼のベッドの中で、二人で初めて常務就任の一報を山崎専務から聞いた朝。

 僅かにまだ、五日しか経ってはいない――

 だが、この五日間が長く、驚く様な出来事が次から次へと…
 そして、予想だにしなかった出来事も、怒涛の勢いで起きてきた。

「はぁぁ…」
 本当に、長く、揺れに揺らいだ五日間。

 まさか、こんな風になるなんて…

 わたしは、初めてマンションに向かった時の様に…
 ドキドキと、心を不安で揺らがせていた。

「あ、そこを左に…」
 週末の割に、道路は空いており、僅かな時間で到着してしまった。

 バタン――
 タクシーの閉まるドアの音が、やけに心に響く。

「ふぅぅ…」
 エントランスに立ち、ふと、上を見上げる。

「………」
 まだ、部屋の灯りは灯ってはいなかった。

 どうしようか――

 そうあれは、本格的な夏の前…

 わたしは、まだ『黒い女』時代の美冴さんの美しさに気付き…
 初めて『嫉妬心』という想いに焦れ、押さえ切れない衝動に駆られ、不意に彼のマンションを訪れた事があった。

 あの時は、このエントランス前で、待ち伏せしていたんだっけ…
 
 バタン――
 すると、奥の通りで、ドアの閉まる音が響いた。

 
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