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シャイニーストッキング
第22章 ほつれるストッキング 1        佐々木ゆかり
 66 違うナニか…

 わたしは…
 彼、浩一さん特有の、甘い体臭に…
 酔い痴れていた――

 そして、その匂い、いや、香りは、わたしにとっては、まるで…
 媚薬そのものの、催淫剤的な存在感。

 本当は、このベッドルームのドアを開けるのが、怖かった――

 開けた瞬間…
 もしも万が一、あの松下秘書のシャネルの香りが、一瞬でも漂っていたならば…
 ううん、こうしてこの部屋の最深部である、ベッドルームまでの過程でさえ…
 シャネルの香りは、微塵も感じられなかったのだから、本当ならば、不安なんてないはずなのであるのだが…

 やっぱりわたしには、怖かったのだ――

 だから、彼に背中をそっと押され、ドアを開けた瞬間…
 わたしは、無意識に息を止めてしまった。

『ふぅぅ…』
 だが、シャネルの香りは、いや、松下秘書の存在感さえもなく…
 いや、全く感じられなかったのである。

「ぁぁ……」
 だからわたしは、思わずそんな吐息を漏らし…

「うん、ゆかり、どうした?」

「え…あ、なん…あ、ううん、あなた、浩一さんの匂いがする……」
 そう、囁き…

「え、そうかなぁ、家政婦さんが掃除してくれてるから、そんなこ…あ……」
 そう話す、彼に…
 無意識に抱き付き、唇を寄せていったのだ。

 いや、無意識ではない…
 そんな自分の、心の不安と揺らぎを悟られたくないが為の…
 誤魔化しのキスといえた。

「ううん、浩一さんの…甘い匂いがする…」

「ゆ、ゆかり…」
 
「あ、こ、浩一さん…」
 わたしは、彼にカラダを預け、抱きしめられる。

 そして、かなり、恐怖といえる程に、あのシャネルの残り香に不安を感じていたせいなのであろう、彼、特有の甘い体臭が…
 いつもの倍以上に、強く感じられ…
 心を一気に酔わせ…
 奥を疼かせてきてしまう。

「あ、ぁぁ……」

 だが、不意に…
 また、さっきの、俯瞰してくるもう一人の自分の存在感が…
 なんとなくなのだが…
 このキスに…
 抱き締めてくる腕の力に…
 違和感を、訴えてきたのである。

 それは本当に違和感なのか?…

 それとも…

 敦子に抱かれて感じた、心の微妙な亀裂から吹いてくる…
 まるで、隙間風なのか?…

 わたしと、浩一さんの間に、今までとは違うナニかを感じていた――

 
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