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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 25 声が聞きたい

「今日ね、あの例の黒い彼女の蒼井美冴さんと面談予定だったんだけど……」
 わたしは夕方の空いた時間に大原部長に電話を掛けた…
 なんとなくだが声が聞きたかったのだ。

「面談が嫌だったんじゃないのか」 
「それは違うの、まだ彼女には面談予定を伝えていなかったから…」
 今迄も一切当日欠勤はなく、初めての事で本当に体調不良らしい…
 と、伝えた。

 だから連日のこの暑さのせいなのか、我がコールセンター部では彼女を入れて3人目の体調不良による欠勤者でシフトが埋められなくなり、わたし自身も深夜までオペレーターとして対応しなくちゃならなくなったのだ…と、言う。

「それは大変だなぁ、だが、オペレーターできるのか」
「バカにしないでくださいよ、オペレーター対応マニュアル作ったのはこのわたしなんですからね」
「あ、そうだった」
「そうですからね、この、わ、た、し、ですから」
 このピンチに少しわたしのテンションが昂ぶっていたのかもしれない。

「だから今夜は行けないです…ね」
 急に声のトーンを下げる。

「そうか、それは残念だ」
「えーっ、全然残念に聞こえませんけど…」
 わざとそう言ったのだ。
 本来ならば今日黒い女の蒼井美冴と面談をし、またいつもの様に心を乱れさせ、部長に逢いにいき、内心では抱かれにいくつもりであったのである…
 そしてその事は心の中で少し愉しみにもしていたのであった。
 だからわたし的には本当に残念であったのだ。
 だが、こんな緊急なトラブルであるのだ、責任者であるわたしがわがままを言うことなどできなかったのである…


 7月31日木曜日午後11時20分
 代役を終え、また部長に電話をした。

「もしもし…」
「あ、ごめん、寝て…ないか、また銀座ですかぁ」
 わたしはまた声が聞きたかったのだ。

「あ、うん」
「ま、そちらはそちらでお付き合い大変そうですね」
 電話の後ろの雰囲気が自宅ではなかった。

「代役、今終わりましたぁ…」
「お疲れさま」
「うん、でも損保系を代役したんだけど暇だったの、よかったわ」
「そうか、でも疲れたろう」
「そうね慣れないからね」
 オペレーター派遣会社のチーフが慌てて代役を探してきて、今、ようやく交代したのだ…
 と、話しをした。

「まあとりあえず何とか繋いだから…」

「そうか…」


 
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