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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 26 心の揺らぎ

 急なオペレーターの代役に少し気持ちが興奮していたようであった、そして今夜逢いたかったのだが逢えなくなってしまった反動なのか大原部長の声が聞きたくなったのである。

「明日朝イチで営業課と会議あるんで、私はとりあえず帰って寝ますね…」
 本心は帰りたくない。

「ああ本当にお疲れさま」
「ありがとうございます、部長もお疲れなんですから…」
「うん…」
 その声の後ろで小さな女の声が聞こえたような気がした。

「お疲れなんだから、もしシャネルのお姉さんから口説れても我慢して早めに帰って下さいね…」
 だから精一杯の嫌味を言ったのである。
 
「な、何を」
「うふ、冗談ですよ、おやすみなさい…」
 そして電話を切った、だが、なぜか心が騒ついていたのだ。

 なに、なんか変だ…
 その騒つきに違和感を感じていた。

 えっ、もしかして、嫉妬なの
 部長の声の後ろから聞こえた、恐らく銀座のお姉さんの微かな声にわたしが嫉妬をしているのか…
 そう思うと余計に心が揺らぎ、騒ついてくるのだ。

 えっ、これが愛なのか、愛情からの嫉妬なのか…
 わたしはザワザワと心が騒つき、戸惑いも感じていた。

 今まで嫉妬も愛もよくわからなかった…
 だが、あの黒い女の存在から徐々に部長を巡ってこんな感情が生まれてきていたのだ。

 これが普通なんだろうが…

 今までの恋愛が普通ではなかったから、ようやく人並みになってきているのかもしれない…
 そう考えるようにした。
 
 明日も朝から会議が続くのだ、とりあえず帰って少しでも早く寝なくては…
 わたしは退社し、帰途に向かう。

 だが…
 帰宅し、シャワーを浴び、寝支度を整え、ベッドに横になったのだが一向に睡魔が来ないのである。
 最近は色々な疲れが蓄積していて、ベッドに横になった瞬間にすぐに熟睡できていたのだか、今夜は眠れないのだ。
 目が冴えているのではない、さっき部長の電話を切ってから続いている心の騒つきのせいなのだ、多分そうなのである。
 仕方なく寝酒に赤ワインの一杯でも飲もうとキッチンへ向かう。

 離婚の慰謝料代わりに貰った3LDKのこのマンション、結婚して直ぐに元夫の議員である義父が譲ってくれたモノであった。

 だが慰謝料代わりに貰ったのはいいのだが、3LDKは1人にはとてつもなく広かった…





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