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シャイニーストッキング
第8章 絡まるストッキング2 蒼井美冴
 11 大人の気遣い

 わたしは大原本部長からスッと唇を離し
 
「シャワーを浴びて帰りますね…」
 そう云ったのだ。

 それには
 今夜はこれで終わり…
 と、いう意味を込めたのである。

「あ、ああ、そうだな…」
 彼の目も、そのわたしの言葉で醒めた目に戻ったのだ。

 仕方ないの、わたし達はこれでいいのよ…
 メリハリのある関係でいなくてはいけないのである。

 それにわたしはまだ復活のリハビリ中なのである、まだまだ時間が必要なのだ…

 そう想いながらベッドから起き上がる。

「あっ…」
 股間から、彼の熱い想いの籠もった、白い液体が、ツーっと垂れたのだ。

「すごくたくさん出たのね…」
 わたしは慌ててティッシュを当てる。

「そうだ、そういえば…」
 彼が訊いてきたのだ。

「その、いつも、中で…」
 大丈夫なのか…と。

「うん、大丈夫なの…
       ……心配ないの…」
 そう目を逸らして応える。

「…あ、そうか…」
 その一言で済ませてくれたのだ。
 さすがである、さすが大人の対応である、わたしは彼のそんな余計な事を訊かないという、大人の気遣いにも惚れ直してしまうのである。

 そしてわたしはそのまま無言でシャワールームに入り、ドアを閉めた。

 できればこのまま先に帰って欲しい…
 そんな意味も込めたのである。


 シャワーを浴び終え、バスローブを着ながらドアを開ける。

 彼はいなかった…

 気持ちを読んでくれて帰ってくれていたのである。
 それにはホッと安堵した。

 さすが想いが伝わっている…
 と、いう想いが湧いたのだ。
 だが、なぜか同時に、悲しい想いも湧いてきて、胸がこみ上げてきていたのである。

 でも、どうにもならないし…

 今は、彼に甘えるしかないし…

 そう懸命に自分に言い聞かせていく。

 仕方ないのだ、これが、今が、いちばんいい関係なんだ…

 再び胸がザワザワと騒めいてきていた。

 

 ブー、ブー、ブー、ブー…

 再び着信する。
 電話は健太からであった。

 どうしよう、出ようか、出まいか…

 可哀想だが、今夜はもう健太には用事はない。
 だが、これから、明日からの仕事の関係もある。
 ただ、もう今は、あの健太の爽やかな声は聞きたくはない。

 可哀想そうだが、明日にしてもらおう…





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