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シャイニーストッキング
第9章 絡まるストッキング3      大原本部長と佐々木ゆかり部長
 68 『黒い女』の秘密

「なんか…わたしも…」
 ゆかりさんに話したい気分…
 そう言いながら、店員を呼んだ。

「ええと…」
 フランスのやや甘口の赤ワインを頼む。

「ゆかりさんは…」
 わたしは白ワインの辛口のシャルドネを頼んだ。

 ドキドキ、ドキドキ…

 胸の昂ぶりと、早くもワインの酔いがしてきているようなのである。

「ええと…どこから話せばいいのかなぁ…」
 少し宙を見ながら独り言のように呟いてきた。

「ああ、もう酔ってきたのかぁ、ゆかりさんに色々話したくなってきた…」
 確かにこんな話す美冴さんの印象は全く感じたことがなかった。
 どちらかといえば『黒い女』から普通になっても、もの静かなイメージがあったのだ。

「うーん…」
 そして美冴さんは意を決したようにわたしの目を、更に見つめて話し始めてきたのである。

「ええと、あの『黒い女』はねぇ…」

 ドキドキ、ドキドキ…

 美冴さんの目に魅了され、吸い込まれてしまう、そしてのその話しの内容に、驚き、魅せられ、感動し、最後は涙がこぼれたのだ。

 最愛の男との出会いから、愛を育む時間の話しから、そしてあの突然の大震災の犠牲になった話し、そしてその心の衝撃で引き籠もり、『黒い女』としてかろうじて社会復帰をし、突然の覚醒までを一気に訊いてしまったのである。

「…そ、そうなんですか、そんな…」
 なぜか、涙が止まらない。

「あ、そんな、泣かないでよ…」
 すると美冴さんも釣られたのか涙がこぼれていたのである。

「なんか、二人して涙流していて、変だわよぉ…」
 確かに、いい歳の女二人が昔話で涙をこぼす、決していい絵ではない。

「はぁぁ、ごめんなさい、つい…」
 わたしは鼻を啜る。

「もお、泣かないでよ…」
「はい、つい…」
 そうなのである、あまりにも予想外の、いや、遙かに予想の上を行く内容に思わず感動と、感涙をしてしまったのだ。

 それに比べてわたしの過去の…

 あの過去の汚さ…

 自己嫌悪に陥ってしまいそうであった。




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