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胡蝶の夢
第8章 夢
薄く色付く花が一面に広がっている。
風が吹く度に舞い上がる花びらは、宙に舞う時を惜しむかのようにしながら次々と落ちていき、同じ色の絨毯を作っていた。
「すごい」
二人並んで息を呑んだ。
すぐに手で触れられる距離に圭がいる。
「風が春色だ」
楽しそうな圭の声が聞こえる。
沢山の花びらを連れて風が駆け上がってきた。
僕はそれを夢中になって目で追いかけ、指をさす。
「見て、圭っ……」
振り向いた僕を追い抜く様に横顔を風が過ぎていく。
すぐ後ろに圭は立っていた。
驚いた様に目を見開いて、固まった表情で。
「瑞貴…、君は独りなんかじゃないよ……」
急に意味のわからない事を口にする圭。
「なに言って……」
圭の身体が傾いだ。
みるみる圭の顔が悲しみに染まっていき、ゆっくりと草の上に倒れこむ。
彼の胸は真っ赤に染まっていた。
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