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胡蝶の夢
第8章 夢
圭が望むなら…。
僕は君が冷たくなってもずっとそばにいるよ。
「瑞貴…、もっとよくまわりを見て…。君はひとりじゃない、いらないものなんかじゃ…、ない……」
「圭…」
「みんな…君を愛しているよ、誰も見捨てたりなんかしない……、だから、泣かないで…」
いつの間にか僕の頬を涙が伝っていた。
「嫌だよ、圭、いなくならないで」
視界が滲む。
弱くなっていく脈の感覚が握った僕の手のひらに残った時間の少なさを教えた。
こんな時まで僕の心配なんてしないで。
いつだって君は自分の事を話さなかった。
自分の苦しみを吐かずに、呑み込んだ毒に蝕まれて、いつも一人で遠い目をしていた。
「……僕はここにいるよ」
曖昧になる意識の中、圭は振り絞る様に言った。
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