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胡蝶の夢
第8章 夢
ここにいるよ…。
きっとみんなそう思っている。
自分の存在を、その価値を、認めてもらいたいんだ。
「うん…、僕は独りなんかじゃなかったね」
圭がいたから。
圭がそうだと言ってくれたから。
君のいない後も僕はきっと救われている。
「瑞貴……」
安心した様に微笑んで、最期に圭は僕の名前を呼んだ。
一陣の風がまた草原の上を撫でていく。
眠っているように安らかな圭の顔に春が届けられた。
頬に花びらが留まる。
僕はその様子を茫然と見ていた。
花びらはしばらく頬を彩ってから、またどこかへ飛んで行く。
「さようなら……」
僕はそれから声をあげてひとしきり泣いた。
……。
「不愉快だ…」
どこからか声が響いた。
腫らした目を上げ、辺りを見回す。
「お前も一緒に死ねば良かったのに…」
いつの間にか近くに誰かがいた。
冷たい声。
もしかしたら、最初からいたけれど気付かなかっただけかもしれない。
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