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胡蝶の夢
第8章 夢
そいつは泣き崩れる僕のすぐ近くに立っていた。
「お前も一緒に死ねば良かったのに…」
聞きたくない言葉をそいつは何度も口にする。
圭とは対照的に真っ黒な靴に真っ黒な服。
僕は歪み滲んだ世界の中で、そいつの足下をゆらゆら見ていた。
手が赤い。
そいつの手は真っ赤だった。
そしてその握った拳の先には手の色と同じ、柄まで赤く染まったナイフが尖っている。
僕はそいつを見上げた。
「身勝手だ…」
そう言いながらそいつはポロポロと涙を流す。
禍々しいナイフを握った姿で、どんな涙を流すというのだろう?
「お前が…圭を殺したの…?」
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