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胡蝶の夢
第8章 夢
そいつは圭に視線を落としたまま、こちらを見ようともせずに淡々と言う。
「……俺が殺した」
頭蓋の中でギリと奥歯が鳴った。
「どうして…?」
なぜ殺されなくてはならない?
圭が。
あの優しかった圭がまさか恨みをかったとでも?
そんなはずない。
圭は死んじゃいけなかった。
死んで良いはずがなかったのに…。
「どうして?」
「………」
僕が問いかけてもそいつは無言のまま動かずに、ただじっと圭を見下ろし続けた。
「俺は圭を喰らって生きている…」
それからしばらくしてぼそりぼそりと独り言の様に呟き始めた。
「俺が生きるためには圭の全てを奪い取らなきゃいけない、俺が生きるためには…」
ザッと地面を蹴る音がした。
踵を反してそいつが立ち去ろうとする。
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