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胡蝶の夢
第9章 華

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「不愉快だ…」
低い声が響いた。
席を立つ椅子の音がピンと張り詰めた静寂を切り裂く。
親父は気にくわないとすぐに席を立った。
何を話すでもなく、黙々と食べ物を口に運ぶだけの機械的な家族の食事。
めったに顔を合わせない家族の、親父と圭と俺、たった三人だけの団欒さえ、癇癪によって打ち破られる。
「卑しいガキが……」
捨て台詞を残して親父は背を向け歩いて行った。
控える使用人に何かを告げて、ドアの向こうに消えて行く。
「気にしなくていいよ…」
凍り付いた俺に圭が言った。
「父さんはいつだってああなんだ、君のせいじゃない」
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