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胡蝶の夢
第9章 華

跡目のためでもなく、兄弟としてでも、家族としてでも必要としないなら、俺がここに連れて来られた理由は何だ?
圭は何でも持っている。
自分に無いものを持っている。
それは何だかとてつもない屈辱だった。
お前は矮小だと言われた気がした。
「寛継……」
寛継の襟に掴みかかったままの俺は、呻く様に言った。
「待っていろ寛継……、お前の主人はいずれ黒崎のトップに立つぞ……」
静かに、けれど強い目で寛継は俺を見据えていた。
「誰も、ただの一言も、俺に逆らわせはしない……。圭も親父も踏み台にして、きっと頂点に立ってやる。誰にも俺の事を卑しいなんて言わせない。俺の所有物に手を出す事は許さない……。俺を認めなかったすべての者たちに……思い知らせてやろう……」
「……」
何も言わずに寛継は立っていた。
負けたくなかった。
圭にも、親父にも、自分に冷酷な世界の全てに。
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