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胡蝶の夢
第10章 心無いモノなら

「御用の無いようでしたら、本日はこの服に着替えてらしてください」
そう言って寛継が差し出したのは質の良い燕尾服だった。
「パーティーでもあるの?」
「まぁ、そのようなところです」
言葉を濁しながら言う寛継の様子を窺いながら、受け取った服をベットの上に投げた。
「たとえ外でパーティーがあったとして、こんな部屋に閉じ込められている僕に何の関係があるってわけ?」
この部屋より外の事に関心が無くなっていた。
求めても得られないと解っているから、無意識に考えないよう思考から排除していたのかも知れない。
自分に関わりの無い事ならばどうでもいい。
「いえ、本日のパーティーにはぜひ瑞貴様にもご出席頂くよう、主人から仰せつかっております」
「はぁ?」
意外な言葉に頓狂な声が出た。
どんな奴らの集まりだか知らないが、公の場に出る事を許されるとは驚いた。
とは言っても見張りなり規約なりは有るのだろうが、それでも外界に触れるチャンスはここから脱出するためにも有益だ。
もしかすると、パーティーの来客の中に家方の見知りがいないとも限らない。
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