この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
胡蝶の夢
第10章 心無いモノなら
「へぇ…」
相手は黒崎だ。
やすやすと信用は出来ないが、少なくともここから一生出られないのよりは希望がある。
「そこで僕は何をしていればいいの?」
「…瑞貴様はピアノが達者でいらっしゃいますから、是非この機会に一曲お願いしたいと仰せでした」
「ピアノ?」
黒崎が演奏に聞き入っているところなど想像も出来ない。
むしろ、アイツは僕の演奏を嫌っていたはずだ。
耳障りだと言ったはずだ。
しばらく考えて、僕は結論を出した。
「ピアノくらい、いくらでも弾いてやるさ…」
もしこれに何かあったとして、企みがあるのはこちらも同じこと。
どちらがどちらを制するか、化かし合いといこうじゃないか。
今の僕には憎悪しかない。
これを糧としなければ進めない気がする。
「では後程、お迎えにあがります」
静かな目で寛継はそう告げてドアの向こう側に消えて行った。
.