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胡蝶の夢
第2章 月
歩き続けるうちに廊下は突き当たりに行き着きました。
消化されていく幻想が呆気なく霧散すると、現実には目の前に大きな扉がありました。
やけに厳重で重たそうな扉。
この先に何か秘め事があるのだと思うと、甘美な背徳に目眩がしそうになりました。
厳格な父とあまりにもできた兄。
彼らの秘密がこの先に……。
けれど私には思い当たる節があったのでした。
父と兄は共に音楽が大好きで、どこかに楽器や譜面の数々をコレクションしているというのはメイド達の間では有名な噂でした。
きっとこの先にそれがあるのだと思いました。
高価な楽器が陳列されているものだと思っていました。
私は思いきりの力で扉を引きます。
鈍い音を立てて扉が軋み、向こう側が明らかになっていきました。
こちらよりもさらにワントーン落ちた薄暗闇の中。
ピアノの音が響いていました。
そして、それに折り重なるようにして幾多の吐息と悲鳴が渦を巻いていました。
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