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胡蝶の夢
第10章 心無いモノなら
寛継の消えた後の扉をじっと見た。
分厚い扉は白い壁にずっしりと重たい存在感を放っている。
この家の奴らは皆おかしい。
先程の寛継も然り、想世も直弥もだ。
抜け落ちてしまった様に皆何かが足りず、足りないためにこの家の中はひどく陰険だ。
殺伐として痛々しい。
これはきっと僕の先入観や思い込みなどではないだろう。
なぜなら、あの圭でさえそうであったから。
黒崎という家に何があるのかは知らない。
人とは不完全な生き物だけれど、誰しもに共通する欠損と言うにはそれは決定的過ぎて、あまりに心地が悪い。
鬱々と暗雲の如く垂れ籠めたコレがもし煙なら、炎に絶えず薪をくべるのはいったい誰だ?
黒崎家が纏う凶相。
圭の死を中心にして僕の中にとぐろを巻く不吉が、僕の背中を押す。
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