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胡蝶の夢
第10章 心無いモノなら
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「瑞貴様」
しばらくして寛継が扉の向こうで呼ぶ声が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼します」
促すと、畏まって寛継が入って来た。
自室でもなければ、こんな部屋に今更失礼も何も無い。
「そろそろお時間です。紅茶をお持ちしましたが、お飲みになりますか?」
僕はベッドに腰かけたまま視線を向けた。
「いらない」
我ながらなんとふてぶてしい態度か。
けれど寛継は気にも留めず続けた。
「瑞貴様、この屋敷に来てからというもの、お食事に手をつけていらっしゃらない御様子ですが、信用なりませんか?」
「ならない」
信用なんてものはここには存在しない。
「そうですか…まぁ、いいでしょう。会場には食事も用意してあります。どうぞそちらをお召し上がり下さい。多くの者が共に食すものなら、信用もありましょう?毒見を御所望ならば、私が」
どこまで本気で言っているのか?
わからない男だ。
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