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胡蝶の夢
第10章 心無いモノなら
言い切った唇に動揺はない。
「あんな奴のためにご苦労だね。僕にはそこまで尽くす意味が分からないけれど…」
裸足の足を指し示して、靴を要求する。
「失礼しました」
すぐさま履き物が運ばれて来た。
寛継が跪いて片足を取る。
「…っ、どうされたのですか?」
そういえば、足の裏が傷だらけだったのを忘れていた。
割れた花瓶に構わず、ズカズカ歩いたからだ。
「すぐに手当てを」
「いらない」
「いえ、それでは私がお叱りを受けます。今、消毒をお持ちしますので…」
そう言って寛継が部屋の隅の箱に手をかけたので、ゾッとした。
例の玩具箱には身体が拒否反応を起こすらしい。
けれどよく思い直してみれば、そういえばあの箱には医療用具も入っていた。
用途は別として。
鳥肌止まないこちらをよそに、顔色も変えずに必要なものを選び出した寛継は、何も無かったかのようにこちらへ戻って来た。
「足をこちらへ」
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