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胡蝶の夢
第2章 月
「いやぁぁぁあっ!!」
何なの?
ここは何なの?
縺れそうになりながら走る足には、メイドに着せられた寝所用のドレスの裾が纏わり付きました。
脚を裾に取られ床に打ち付けられても、それでも後退ります。
「うえっ……」
込み上げて来るものに嗚咽が洩れました。
苦しい。
慌てて口を塞ぎます。
ここに監禁された彼女達に失礼な気がしたのです。
「ごほぉっ…、ごほぉっ」
嫌。
こんなの嫌。
まさか、求め暴いた秘密がこんなものだったなんて…。
藻掻く様にジタバタと手足を動かし、少しでもこの場から逃げようと試みました。
私は必至でした。
この淫欲の坩堝から這い出るために……。
――――だから、気付かなかったのです。
いつの間にかずっと流れていたピアノの音が鳴り止んでいることに。
そして、後退る私のすぐ後ろまで迫ったもう一人の存在に。
「しっ……、騒がないで」
そう言われる間もなく突然に、私の口は塞がれました。
何者かの掌が口を塞いでいた私の手をさらに包み込む様にして、背後から塞ぎます。
「んんんぅっー!!」
「大丈夫だから…」
男性の声でした。
それは父のものでも兄のものでもなく、もう一人の別の誰かの声。
抗えない強い力に私はどこか奥の個室へと連れ去られたのです。
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