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胡蝶の夢
第2章 月
そこはとても広い部屋でした。
大きな窓からは風が吹き込み、薄いレースのカーテンがはためいています。
「んんっー」
力の限り暴れても彼は決して放してはくれませんでした。
男女の力の差を恨めしく思います。
「おとなしくしてよ」
抵抗などもろともせずにそう言って、彼はもう片手で私のドレスの裾を引き裂き、それによって出来た布切れで私の手と口を封じました。
そして、部屋の一番奥にあるクローゼットの中に私を閉じ込めたのでした。
なんの事かもわからず乱暴されたと思っていたけれど、彼の真意を知る事になりました。
「もう少しであいつが来る、君はここでおとなしく隠れておいで……」
まさか。
恐る恐る顔を上げました。
私は彼が犯人だと思っていました。
この監禁の檻は彼によるのものだと。
けれど、顔を上げた先に見えたのは、月明かりに照らされた優しい微笑みでした。
容姿端麗な方でした。
女性と見紛うくらいに美しい方でした。
病的なほど透き通る白い肌と、色素の薄いサラサラの髪。
そのすべてに魅入ってしまう程でした。
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