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胡蝶の夢
第2章 月

黒光りするピアノがこの部屋の装飾品の様に見えました。
何もないガランとした部屋。
そこには彼とピアノしかありません。
何故、彼はここにいるのでしょう?
こんな恐ろしい場所に何故?
――…チリリン
ベルが鳴りました。
何処からともなく聞こえるベルの音。
それからしばらくして、部屋の扉がゆっくりと開きました。
誰かがそこに立っています。
「……自ら来てやったぞ…」
背の高い男…。
スラリと長い肢体。
尊大で高圧的な姿勢。
そこには、私が見たことも無い様な冷たい顔で彼を見下す、兄の姿がありました。
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