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胡蝶の夢
第4章 檻
僕は箱に手を伸ばした。
何かの罠ではないだろうか?
どこかで黒崎の高笑いが聞こえるような気がする。
けれど、よく見るとその箱には小さな紙が貼り付けてあった。
『どうぞ使ってください』
控えめな小さな字でそう一言だけ添えてある。
これは…。
黒崎じゃ…ない…。
おそるおそる箱を開けると、そこには男物の衣類が一式入っていた。
天の助けとばかりに慌てて袖を通す。
こんな事をするのは誰だ?
誰がこんな事をしてくれる?
入っていた黒のパンツと白い薄手のシャツを纏う。
これでみすぼらしく裸で出歩く事は無くなった。
この屋敷がどこに建ち、どのような使われ方をしているのかは知らない。
それでも外に出るには衣類が必要だった。
『ありがとうございました』
ひらりと衣類に紛れていたメモ書きが宙を舞った。
円をかいて落ちていく。
ありがとう?
誰だ?
白いメモは昨晩助けたはずのあの少女を思い出させた。
まさか!!
いなかったはずだ。
あれは幻想だった…。
でも…
本当に幻想だったのか…?
僕は慌ててドアノブを掴んだ。
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